OS FS 52S サーパス 吹き返し対策 完結編 ベンチで実験
金曜日の午前は台風が来る前の一時的に雨が降らない天気でした。運用可能状態になった吹き返し防止用の「吹き返しトラップチャンバー」略して「チャンバー」の効果を実験することにします(本当は台風通過後の予定だった)。
クランクケース換気システムの実験のときは吹き返しの状態をしっかり確認できなかったのでチャンバーを付けたときと付けないときでの対照実験の意味合いもあります。
このほか、「エンジンまわりはきれいです。けれども回転がガタ落ちでした」になってはがっかりですからキャブレターより上流側にチャンバーという余計なものが付いたときの性能への影響も確認します。
実験の道具立て
最初はチャンバーなしで運転し、実験の途中で現場でチャンバーを取り付けます。ネジは予備も含めて小さなチャック付きの袋に入れておきます。
動画がうまく撮れなかったときのためにエンジンの後ろにクラフト紙をセットしたスチール定規差し込んでオイルの飛散状況が分かるようにします。
飛行場の隅で店開きです。3連休は今日しか晴れないというのに2人しか来ていません。気兼ねせずに実験できます。
キャブレターを裏返しにしてエンジンの左側にニードルバルブが来るようにしたので、エンジンの右側にしゃがんで排気をかぶりながらニードルを調整するという苦行をしないで済みます。
タンクは元はテトラのバブレスタンクですが、風船に穴が開いたので風船を取り去ってクランクタンクにダウングレードしたものです。
手前のスマホスタンドは動画撮影用の3脚の代わりです。
動画のリンクはこのブログの下の方に貼っておきます。
チャンバーなしでの吹き返しは?
まずクランクケース換気システムを作動させずに運転しましたが、最高回転とその時のニードル位置は作動させたときと同じ、アイドリングが同じスロットルの開きで1,000r.p.m以上低くなるというのはこの前のベンチテストと同じです。
動画を撮って吹き返しの差を比べましたが、正直クランクケース換気システム作動時との差はわかりません。
クランケース換気システムを作動させての運転に移りました。
せっかくクラフト紙を用意したのでエンジンの後ろにかざしてみました。数秒で油が付きます。こんなことより良い動画が撮れたのそれを見た方が分かりやすいです。
低速運転での吹き返しの状況のキャプチャーです。チャンバーの取付けステーにオイルが付着してキャブからの吹き返しの混合気で波立っています。取付けステーが良い働きをしています。静止画ではよくわかりませんが盛大にしぶきを吹いています。
文系の人間の理解では低速運転なら吸気系の負圧が強くなって吹き返しは起きにくくなるはずでしたがそういうことにはなっていません。
低速運転では吸気行程の終わり近くでピストンが下死点通過後、時間的に長い間吸気バルブが開いているので混合気が逆流するのでしょうか(高速運転では下死点通過後に吸気バルブが開いている時間は短い)。
それとも混合気が濃くて未燃焼の燃料が多いことと、それによりエンジンの運転状態が悪くなって(スロットル開度に対して回転数が低い状態になって)勢いよく混合気を吸えなくなってしぶきが目立つのでしょうか(こんな考え方でいいのかな?)。
高速運転での吹き返しの状態です。吹き返す混合気の勢いが強くなってステーの油は付いたそばから吹き飛ばされている感じです。
チャンバーを付けない、キャブレターの上流がクリヤな状態での回転数を取りました。11,700r.pmが出ますがすぐにそのポイントより4コマ戻して11,400~11,500r.pmくらいにします。
チャンバー付きでの運転
エンジンが冷えるのを待ってベンチからエンジンをおろしてチャンバーを取り付けます。
エンジンの後ろが油まみれでクランクケース後ろ蓋にクロッツの赤いオイルが貯まっています。付着したオイルには揮発成分がかなり残っています。
チャンバーセットです。
チャンバーのエンジン側の半分をステーに取付けます。エアクリーナーは付いていませんが実車のエアクリーナーボックスという感じです。
蓋をしてチャンバーの取付けは完了です。取付けに5本のねじが必要なのは設計がまずくて製作技術が未熟なせいです。うまく作ればねじ3本で取り付けられたはずです。
吹き返しのチェック
チャンバーの外まで吹き返しが出ているかをチェックしました。
チャンバーの入口から吹き返しが出ていれば、エンジンの下側を通った風に吹き返し由来の油分が含まれているはずです。クラフト紙を当てて調べてみたらうれしいことに油は付きませんでした。
前からチャンバー内の様子が分かるかなと思って動画を撮りましたが良くわかりません。肉眼でもわかりません。というかプロペラが回っている前にしゃがみ込むのは危険です。強力なペンライトでも持ってくればよかった。
性能チェック
性能が落ちていたらいやなので回転数も取りました。このキャプチャー画像では11,800r.p.mが出ていますがこれは瞬間的な値です。実際にはチャンバーなしでと同様、11,400~11,500r.p.mくらいの少し甘目の混合気で運転します。
吸気系統に余計なものが付いたのですが回転計に表れるような差はありませんでした。ニードル位置も同じです。
低速の様子も見ます。
2,200r.p.mで安定しています。前回よりもアイドル調整バルブを締めてメーカー推奨値近くになりましたがまだ濃い目です。このエンジンは濃い目の混合気に強いなという感じです。
このエンジンのアイドル調整バルブの反応は対抗ニードル式のENYAよりかなり鈍感なこともあって低速の調整は楽です。
要するにチャンバーを付けても性能に影響は出ないということでした。チャンバーなしの11,700r.p.mとチャンバー付きの11,800r.p.mは誤差の範囲でしょう(出力増大の効果があればうれしいのですが増大する要素は思いつきません)。
実際に飛ばすことを想定して上向きでの調子も見ました。低速を濃い目にしているので苦しくなることはありませんでした。
さすがOSだけあってよくできた使いやすいエンジンです。中国製のガソリンエンジンとは大違いです。
チャンバーの効果はあったが改善点も
チャンバーの効果はありました。エンジンの後ろは油っ気がある程度で油でベタベタということにはなっていません。エンジンの性能も損なわれていません。
工作に3日間かけた甲斐がありました。
ただし、気になることがあります。
運転後にチャンバーの中を見ると燃料由来の赤いオイルが溜まっているのが見えます。
これを一気に吸い込んだらプラグが濡れてエンストするかもしれません。チャンバーの内側にオイルが溜まることなくチャンバーの内壁をどんどん流れて吸気パイプに吸い込まれていくような工夫をした方がよさそうです。
ベンチテスト後にチャンバー内に溜まったオイルをペーパータオルで吸い取りました。
ごらんのとおり、結構な量です。
帰宅後、ベンチからエンジンをおろしてマウントの内側を見ると、以前のベンチテストで普通に回したときに比べると格段にきれいです。
ティッシュでぬぐってもそれほどついていません。普通に回したときは傾ければマウントの前から油が垂れるくらい油が溜まりますからそれとは大違いです。とはいってもどこかからオイルが漏れてはいます。
チャンバーは外側も油だらけです。チャンバー外側の油やマウントの内側の油がチャンバーの入口から逆流したものかチャンバーの継ぎ目から漏れたものかはわかりません。
チャンバー内部に油が貯まる問題の解決とチャンバーの吹き返し防止機能の強化のため、天気が悪い日などに「吹き返しトラップチャンバー」のバージョンアップ版を作ってみようかなという気になります。
ついでの実験
せっかくのベンチテストですから以前作っておいた4サイクルエンジン用サブマフラーも持って行きました。いずれも内径7mmのパイプを使ったものですから口径はOS純正マフラーの5.5mmより大きくなります(背圧を上げず、出力の低下をなくすか少なくするため)。
大きいのは多孔貫通管型ですが気持ち音が小さくなったかな程度、
小さいのはステンレスウール入りですが大きい方との差ははっきりしません。
バッフル付きの消音効果の高いマフラーに追加で何を付けても大きな差は出ないということでしょう。口径を5mmとか4mmに絞れば別でしょうが。
Test of "Spit trp Chamber" for model engine
実験内容をすべて網羅した動画を投稿しようとしたら途中でプログラムが終わってしまいました。試しにダイジェスト版にしたらアップできました。
生燃料の吹き出し具合は見ものですから是非ご覧ください。