年金生活フライヤーのブログ

ラジコン飛行機関連のブログ

OS FS 52S サーパス 長期保管

 OS FS 52Sサーパスを「吹き返しトラップチャンバー」の試験のためにテストベンチで回したのですが、今後は機体ができるまでは運用する機会がありません。ということで長期保管状態になります。
 錆びさせないで保管するにはどうしたらよいでしょうか。

取説ではどうなっているか

 取説を見てみます。

 FS 52Sの取説には「内部を灯油(ガソリンは不可)でよく洗った後、・・・」と書いてありますがそのすぐ下にOリングが膨潤するから灯油は使うな、「エンジンの洗浄にはメタノールをご使用ください」と書いてあります。外側はアルコールで洗い内部は灯油で洗うということになりますが灯油がキャブレターに回らないようにするのは難しいですね。
 そもそもプラグを外したくらいでエンジンの内部が洗えるとも思えません。

 新し目のFSα56の取説には「アルコールを使用してください」と書いてあります。
 でも「エンジンが完全に入る容器にアルコールを入れ、・・・」なんてことは工場レベルじゃなければ厳しいですね。
 洗った後の汚れたアルコールはどうするんでしょうか。洗面所やトイレに流していいわけがありません。回収してアルコールストーブの燃料にするとかでしょうか。


 他社の取説も見てみます。
 ENYA 53-4Cの取説ではこんな具合です。

 53-4C用の取説には何で洗えとは書いてありませんが標準の取説では「燃料又はガソリン等」で洗えと書いてあります。ENYAは2サイクルエンジンならOリングなんか使っていないからガソリンでも平気なのかもしれませんが、4サイクルエンジンでは吸気パイプとシリンダーヘッドのシールにシリコンを使っているモデルもあるしプッシュロッドカバーのシールにOリングを使っていますから心配です。
 燃料で洗えば潤滑油が含まれているから油切れの心配もありません。
 どうやって「内部を洗浄」するかは書いてありませんが前蓋(クランクシャフトハウジング)は4本のネジで外せますから内部のアクセスは簡単です。ちなみに「モービル油等」はエンジンオイルのことでしょうね。
 ENYAの英語版の取説にはすごいことが書いてあります。

 「燃料に含まれているオイルが内部のすべての部品を潤滑するから通常は内部機構への給油の必要はない/ It is usuallly needless to supply any oil to the inner mechanism」そうです。誤訳じゃないですよね。「通常(usually)」じゃないときはどうするかは書いてありません。


 SAITOはこんな具合です。

 洗浄にはアルコールを使えということです。リヤカバーを外せば内部が洗えますけどキャブレターも外すことになります。
 SAITOの取説の良い所は「エンジン停止のときは、混合気の多い状態でエンジンを停止すると、クランクケース内部のベアリングなどが錆びる事がありますので停止前に高速回転で10秒位運転させて、燃料をカットして停止させます。」と書いてあるところだと思います。
 混合気が濃い状態(したがって低温)で回せばエンジン内のオイルはただの水ではない酸性の水溶液が混じって乳化した状態になる恐れがあるので理にかなった説明です。

現実的な手入れ

 実際に僕がやっている方法を紹介します。こういうやり方で保管するようにしてから錆が出たということはありません(今のところだけかもしれませんが)。

アルコールで洗う

 OS FS 52Sは低速調整バルブにOリングを使っています。エンジン本体ではプッシュロッドカバーの上下にOリングが入っています。
 ゴムや樹脂でアルコールにも石油系にも強いものはそうそうはなく、片方で大丈夫なら片方でダメというものが多いようです。
 グローエンジンに使っている素材ならアルコールには大丈夫でしょうし、サーパスシリーズからアルファシリーズに替わって灯油に弱い(アルコールに強い)素材に替わったとは思えません。ということでFS 52Sの取説に逆らい、最近の趨勢を反映したFSα 56の取説に従ってアルコールを使います
 それにアルコールは極性溶液ですから水と混じりやすい、つまりエンジン内部に残った酸性の水溶液を溶かして清掃する効果が強いのではないかという期待もあります。


 僕は燃料の自作用に一斗缶でアルコールを買っているのですが「エンジンが完全に入る容器」に入れるだけのアルコールがあるなら自作燃料に回します。
 取説に逆らって少ない量のアルコールで洗うことにします。
 ボートや車をやっている人は日常的にヘッドを開けたり後ろ蓋を開けたりします。このエンジンはネジを6本外せば後ろ蓋が外れ、ねじ2本でロッカーアームカバーが外れるのですが「一度組んだものはできるだけばらさない」方針の僕としてはばらさずに内側を洗います。

 適当な容器に自作燃料用のアルコール(メタノールに少量のIPAを混合した塗料用シンナー)を入れて、

 ブリーザーニップルから数cc吸い込みます。もともとあったクランクシャフトハウジングの下のニップルはふさいでおかないと吸い込めません。

 ブリーザーチューブからアルコールが飛び散らないように栓をしますがアルコールは粘度が低いのでドライブワッシャの後ろからダダ漏れになります。新聞紙を敷いておいた方がいいですね。
 プロペラを付けてシャフトを回しやすくしています。エンジンを上に向けたりひっくり返したりして各部にアルコールが回るようにしながらプロペラを回します。

 数cc吸い込ませては回転して排出する作業を数回繰り返します。後ろ側のニップルにアルコールが集まるようにして空き缶に捨てます。
 洗浄に使ったアルコールやベンジンはこの缶に入れて蒸発させた後に中のゴミと一緒に捨てます。アルコールや石油系溶剤の蒸気が出ますが下水に流すよりは環境に良いでしょう。
 ジクロロメタン(塩化メチレン)のような有毒な溶剤を含む製品も市販されていますが処理施設のないDIYレベルでは蒸発させることで処理しろというのが販売業者の説明です。

防錆油をアルコールで溶かして回りやすくする

 アルコールをあらかた排出したら防錆油を注します。防錆油の粘度がアルコールで低くなって各部に回りやすくなることを期待してアルコールを乾かす前に注します。たくさん注してもエンジンが回らなくなるということはないので2,3ccは入れておきます。
 いろんな銘柄の防錆油を試した上で決めたわけではないのですが、いかにも効き目がありそうな匂いのするアイエムのストックオイルとクロッツのテクニプレートを混ぜたものを使っています。注した後はエンジンを上にしたり下にしたりしながらプロペラを回して油を回します。

アルコールを飛ばす

 アルコールは水と相溶性があるので湿気を呼ばないためにアルコールを飛ばしておく必要があります。ブリーザーニップルしか外気との流通がないので積極的に加熱する必要があります。メタノールの沸点は64.7℃ですから手で持てなくなるくらいまで温めればほぼ大丈夫です。もたもたしてエンジン内部で水分が凝結したらもっと温度を上げなければならないので手早く済ませます。

 僕は最近、小さなアルミのキャップに1ccくらいアルコールを入れて野外炊事用の五徳の上にエンジンを乗せて温めています。アルコールを1cc燃やせばエンジンは長いこと手でさっわっていられないほど熱くなります。

 ブリーザーチューブにアルコールの蒸気が凝縮して溜まりますからアルコールの飛び具合が分かります。凝縮した液体が無くなれば完了と考えています。
 火の付きやすいもの(アルコール)を火で温めるやり方ですからお勧めはしません。もっと安全なやり方を模索すべきです。
 スロットルレバー(スロットルアーム)がプラスチックなので気を付けなければなりません。OS 25FSRのスロットルレバーを溶かしたことがあります。

燃料で洗うのはありだけど

 アルコールで洗うくらいなら燃料(ひまし油系燃料ではダメ)でも洗えます。ENYAの取説には燃料で洗えと書いてあります。
 ということで10年くらい前にENYA 41-4Cでブリーザーチューブから燃料をたっぷり流し込んでおいたら次に使うときに錆びていました。これは燃料が錆を呼んだのではなく、アルコールなどの揮発成分を飛ばさなかったからでしょう。機体に積んだままでしたらからエンジンを温めてアルコールを飛ばすということはできませんでした。
 エンジンを開けて洗うならともかく、また、エンジン内部が外気に開放されている2サイクルエンジンならともかく4サイクルエンジンではやめた方がいいかもしれません。
 防錆のためというよりアルコールの代わりに燃料で洗うという感じです(洗った後は良く乾かす)*。燃料で洗っただけで長期保管が大丈夫ということにはならないでしょう。
 ENYAの取説をよく読めば洗った後にちゃんと防錆油を注せという旨で書いてあります。
* 昔のラジコン技術にその日の運転の最後に生の燃料をエンジンの中に入れて錆を防ぐということが書いてありました。ネットでも生の燃料でエンジンの中を洗って空回ししておくという方法が紹介されています。お前はやるのかと聞かれればやらないのですが、廃油がいっぱい残ったエンジンに少量の防錆油を注すよりははるかにいいと思います。

外部の防錆

 エンジンの外側の鉄がむき出しになっているところは錆びます。鉄のねじによく使われている黒染め(四酸化三鉄)はそれほど防錆力はないそうです(実際よく錆びます)。金属表面処理会社の情報によれば油が浸みこむことで防錆力を確保する意味合いもあるそうです。

 何でもいいですから油を塗っておきます。綿棒が役に立ちます。ニードルバルブまわりはグローエンジン用の防錆油にしておきます。

格納

 保管にはブリーザーパック(バッグ?、パック?どっちですかね?調べりゃわかるんでしょうが)がいいんじゃないでしょうか。OSやSAITOの取説でも「ビニール袋」になっていました。さすがに「吹き返しトラップチャンバー」は外していますが取付けステーは付けたまま、排気マニホールドも付けたまま保管します。
 2サイクルエンジンがマフラー付きで袋に入っているのは「一度組んだらできるだけばらさない」という方針だけではなく、2サイクルエンジンではマフラーを付けたり外したりをしたくないからです。
 この辺については「グローエンジンへのマフラーの取付け」をご覧ください。

×

非ログインユーザーとして返信する