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世界最小(と言われている)ガソリンエンジンNGH GT9-Pro奮闘記②

NGH GT9 Proの概要です。メーカーのサイトから情報が得られますが(英語が変ですが解読可能)、重複をいとわず紹介します。


旧 型
 購入したエンジンは2016年頃から出回り始めた新型ですが、同じ金型を使ったと思われる先行型もあります。


 現行型と違い、キャブレターとポンプが分離式です。ドライブシャフト、シリンダーヘッド、スロットルアームに青のアルマイト加工がされ、マフラーが黒くなっているなど、現行型より高級感が漂っています。このエンジンのテストベンチでの試運転を現場で見たことがありますが、ベテランが扱っても調整が難しそうでした(動画がYoutubeでもアップされている)。ネットでも酷評されており、キャブレターの調整が難しい、又は全く不可能だと評価する声が多く、グローエンジン用のキャブレターを付けた方がガソリンで回しても良い結果が出たとする人までいます。
 追記(2022-10-11):ネットをあさっているとYouTubeの動画を見つけました。僕が現場で見たのと同じエンジンです。グロープラグ(ENYA No.5)での運転も実験していますね。




 新型になって、キャブレターとポンプが一体化され、Walbroに似た形になりました。メーカーや取扱業者の宣伝文句でもキャブとポンプが一体化され、安定栓が向上したとされています。


外 観

 佐川急便で届いた製品を見てみます。メーカーのサイトでは美麗な箱でしたが届いた箱はチープです。箱の中の一番上に入っている取説はコストの関係でしょうか判読に苦労するレベルで印刷がかすれています。メーカーのサイトに同じ内容の取説や分解図が公開されているのでそちらを見ました。中国風の英語ですが解読は可能です。説明内容はOSやSAITOに比べて非常にあっさりしていてENYA並みです。

 箱の中には点火ユニット、エンジン本体、マフラー、プラグが別々のビニール袋詰めになって入っています。プロペラシャフトのネジは1/4-28でこのクラスのエンジンと共通です。プロペラナットの二面幅は11mmと国産エンジンではない寸法でした。プロペラワッシャは鋼鉄ですが薄くてチープな感じです。


各部の様子


 クランクケースは砂型鋳物(sand cast)だという情報もありましたが見た感じはダイカストにサンドブラストを掛けた感じです。鋳物は湯のまわりが悪い所もありますが粗悪品という感じではありません。メタリングダイヤフラムを押さえているふたは板金の打ち抜き、微妙にしわが寄っていて国産ならこうはならないだろうなという感じはします。


 バックプレートを外しました。分解図ではバックプレートとクランクケースの間にガスケットが挟まるようになっていますが現物では省かれていてその替りにパーマテックスのようなシリコン系の茶色の液体ガスケットを使っていました。組み立ての時にクランクケース側にガスケットを塗ってからバックプレートを押し込んだようで、ガスケットがクランクケースの中にはみ出ていました。コストを押さえつつ機能を確保するには良い工夫ですがバックプレートを外すたびにシリコンガスケットを塗るのは面倒なので厚めのクラフト紙でガスケットを作りました。

 バックプレートとクランクケースの内側に付着したガスケット用のシリコンは取り除きました。ヘッドは削り出しで、よくあるスクイッシュバンド付きの燃焼室です。スクイッシュバンドは中央に向けて上向きに傾斜し、ドーム部とのつながりにはRが付いています。ヘッドはサンドブラストを掛けた後に表面処理をしてギラギラした仕上げになっています。なんか下品な感じです(個人の感想)。


 最初にヘッドを外したときにシリンダースリーブを抜こうとしたら2~3mm抜くとスリーブが引っ掛って抜けませんでした。後日ヘッドを外した状態でクランクシャフトを回すとシリンダースリーブが飛び出しました。何かの仕掛けで固定されていたのではなく、スリーブの加工でできたバリで引っ掛かっていただけのようです。クランクケースにシリンダースリーブの位置決めをするピンなどはないので再組立てをするときはクランクケース側の排気口とシリンダースリーブの排気ポートの位置が合うようにして常に同じ位置に来るようにします。考えてみればシュニューレ以前のエンジンではシリンダースリーブの回り止めなどなかったし、現在でもENYAの製品にはないのですからよほどずれない限り気にしなくても良いのかもしれません。ピストンリングには数本横溝が掘ってあります。


 シリンダーの内側は、国産品にあるようなきれいなクロスハッチは付いていませんが適度にバイト目が残っているので潤滑に貢献しそうです。ピストンはアルミ合金の鋳物を機械加工したものでそれなりの品質、ピストンリングは実物エンジンのようにピストンクラウンからはみ出すほど大きく開きます。ピストンリングにはきちんと回り止めが付いています(ついていなければリングの端がポートに引っ掛かります。)。
 コンロッドは驚愕のリン青銅製です。飛行機用エンジンで鉄のコンロッドを見たことはありますがリン青銅は初めてです。GPカー用エンジンでリン青銅のコンロッドを使っている製品の写真を見たことがあるので強度的には大丈夫なのでしょうが重量的には不利です。クランクピン、ピストンピンとコンロッドの遊びは新品の状態でも目で見てわかるくらいあります。

 キャブレターはポンプ用とメタリンク用のダイヤフラムが付いています、燃料はキャブレター後部のダイヤフラムポンプで圧送され、キャブレター前部のメタリングチャンバーに回り、メタリングダイヤフラム、メタリングレバー、メタリングニードルで規制されてスプレーバーに向かいます。圧送された燃料はスプレーバー側の高速ニードルと低速ニードルで流量が規制されます。低速ニードルはスプレーバーにはまり込んで高速ニードルで規制された燃料を規制します。スロットルローターを絞るとスロットルローターがらせん状に回ってスプレーバー側に近づいて取り付けられた低速ニードルがスプレーバーに入って燃料の出口を絞ります。要するにグローエンジンの対抗ニードル式キャブレターと同じです。
 調整できるところは高速ニードルと低速ニードルだけでアイドリングのスロットル開度を規制するストップスクリューやメタリング用のダイヤフラムの働きを調整するネジのたぐいはありません。また、対向ニードル式のグローエンジンに比べて低速ニードルのテーパーが緩い上に低速ニードルがスプレーバーにはまり込んでいる部分が長く、スロットル全開の状態でもスプレーバーに食い込んでいます。運転してわかりましたが、フルスロットル付近でも低速ニードルが効き、高速ニードルをいくら開いても混合気が濃くならない状態になります。さらに低速ニードルを閉じるとアイドリングは安定しますがハーフスロットル以上で燃料供給が足りなくなって回転が続かなくなります。これにはあとあと悩まされました。

 OSやSAITOのガソリンエンジンの取説にはポンプやレギュレターは「絶対に分解しないでください」と書いてあります。NGHの取説でもキャブレターの分解図は書いてありませんから分解は勧めていないと思われます。一方、レーシングカート、チェンソー、刈払機のエンジンではキャブレターのパッキン、ダイヤフラム、ニードルなどの消耗部品は自分で交換できるように交換部品が販売されています(刈払機用のエンジン向けならホームセンターでも手に入る。)。レーシングカートはともかくチェンソーや刈払機を使う人が内燃機関の専門家とは限りません。そういう人でも分解するのですから、ラジコンという「知的な趣味」を持っている者ならばポンプ付きのエンジンといえども自己責任で分解はできるはずです。パッキン(ガスケット)がちぎれるなど部品を壊したり、間違えて組みなおす恐れもあるのですがばらしてみました。
 キャブレターはメタリング用のダイヤフラムとポンプ用のダイヤフラムがあるという点でWalbro系のロータリーバルブ式のWY系統のキャブレターに似ています。ポンプ用のダイヤフラムは繊維がはいった薄い茶色の材質で、これもWalbroと同様です。グローエンジンの構造を踏襲した小型のガソリンエンジンという点で共通点のあるEvolution 10GXの分解図を見るとそれをコピーしたのではないのかと思うほどよく似ています。

 マフラーは機械加工した排気マニホールドにアルミのパイプとアルミの板をロー付けして作られています(TIG溶接とかではなさそう)。寸法は円筒部の長さが68mm、直径が28mm、尾管は外径12mm、内径10mmです。円筒部の肉厚は1.5mm位ですから容積は36ccくらいです。外側はきれいですが、内側を見るとフラックスが流れて表面が荒れたところが残っている、マフラーのふたがきちんと丸く切り出されていないという具合の品質です。国産品とは大きな差があります。尾管の向きは固定ですが、マフラーの前後を逆にすれば尾管の向きを上又は下にすることができます。マフラーの中身には何の仕掛けもありませんし、容積が非常に小さく、尾管の内径は10mmですから消音効果は期待できません。ちなみにOSの46~55級のE-3071マフラーはバッフル付きの上に尾管の内径は6mmです。



互換性チェック

 マフラーの取付け穴はこのクラスのエンジンに共通的な37mm間隔です。写真は46SF用の873マフラーですが、取付け寸法が同じAX46~55用のE-3071も当然付きます。OS製のラジアルマウントに載せてみましたが、エンジン側のラグに突起があるのでそれをかわすためにマウント側を削る必要がありました。


運転前の作動チェック
 各部をチェックした後でプロペラを付けてフリップしてみました。かなりシャリシャリした手ごたえでした。国産エンジンなら新品の状態でもプラグとバックプレートを外してプロペラを叩けば惰性で何回かスルスル空転するのですがそのような滑らかさはありません。
 プラグを付けてみると圧縮をほとんど感じません。排気口を見るとピストンとシリンダーの隙間から盛大に泡が吹き出します。リングの張りが強くて横溝もついているのに圧縮が弱いのにはがっかりしました。しばらく運転すると圧縮が感じられるようになりましたがプロペラシャフト(ドライブワッシャではない)を指でつまんで回しても上死点を乗り越えられるレベルです。国産のリング入りエンジンではどんなに使い古してもここまで圧縮がなくなることはありません。
 初めてのガソリンエンジンなので本当に火花が飛ぶかどうか調べてみました。配線した後プラグを外してプラグキャップにはめ、プラグ本体をエンジンにくっつけ手でプロペラを回しました。取説では4.8Vから使用可能ということなので電池フォルダーに使い古しの単三のNiMHを4本入れて試したところダメでしたがアルカリ乾電池4本でちゃんと火花が飛びました。電圧がある臨界量を下回ると全然作動しないような感じです。実際に使用する2セルの1300mAhのリポ電池で問題なく火花が飛びました。電池式なので刈払機やチェンソーと違って力いっぱいプロペラを叩かなくても火花は飛びますからプラグのチェックは楽です。


 次の記事では実際に使ってみてから遭遇した苦闘の数々を紹介します。

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