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世界最小(と言われている)ガソリンエンジンNGH GT9-Pro奮闘記③

  NGH GT-9 Proを実際に使った結果です。これからこのエンジンを買おうと考える物好きな人の参考になれば幸いです。国産品に比べればお値段なりなのは当たり前ですから温かい目で見守らなければなりません。
 まず試運転です。OS46~55をセットできるテストベンチはあるのですが、点火ユニットや点火用の電池を取り付ける手間がかかります。また、最近のOSエンジン同様、キャブにアイドルストップスクリューがないのでスロットルバルブを任意の位置で固定する仕組みが必要です。どうせいつかは飛ばすので専用の機体を作ることにしました。スロットル操作をエンジンから離れて行えるのでテストベンチの横にしゃがみ込むよりエンジン調整は楽になるとも考えました。
 機体を作っている最中にNGH GT9 Proについて情報収集していたらNGHのイギリスの取扱業者Just Engineがこのエンジンのグロー仕様を販売していることを知りました。

 キャブレターとマフラーをJust Engineブランドのグローエンジン用に替え、クランクケースのプレッシャーフィッティング用の穴にふたをし、回転センサーを取り外しています。ドライブワッシャの磁石がどうなっているか確認できません。マフラーを替えたのはオリジナルのマフラーではうるさかったからでしょう。グロー仕様が出ているということはガソリン仕様がポンコツで売れ行きがかんばしくないのではないでしょうか。不安がつのります。買う前にこの情報を知っていたらと思いました。ともあれ機体はできました。

 機体は簡単に作れることを主眼にしたので主翼はキットの部品を流用、その他は自作です。重量は2kgをわずかに上回る程度なのでグローの46並みの力が出れば軽快な飛びが期待できます。エンコンサーボで正確なスロットルコントロールができるので機体を作ったのは正解でした。最初は正立仕様でマフラーはOS 46SF付属の873です。

 OS用のマフラーでは回転の低下が激しいので以前買っておいたアメリカ製のSlimlineマフラーに替えてサイドマウントにしました。回転はかなり上がりましたが静かな(Quiet)はずの「Q」シリーズですがエンジン付属の爆音マフラーよりややマシというレベルです。
 2019年12月に機体が完成してからテストを始めましたがいろいろと苦労しました。順番に挙げていきます。


① 燃料がオーバーフローする(メタリング系統の不調)
 最初から燃料の供給が多すぎるエンジンでした。キャブから燃料のしぶきを噴き上げながらエンストする状態でしたから慣らし運転の最初の段階でも低速ニードルをかなり絞らなければなりませんでした。ひどいときには燃料が流れっぱなしになって(メタリング機能が効かずに)エンストします。

 ポンプ式の実用エンジンと同様、圧力の変化に応じてメタリングダイヤフラム(定量膜片総成)が吸い込まれたり押し出されたりしてメタリングレバー(針閥揺臂)を押したり引いたりしてメタリングニードル(針閥)の開閉を規制するのですが、メタリングレバーがメタリングニードルを押しっぱなしになっていたことが原因でした。


 メタリングダイヤフラムとメタリングレバーの間隔を広げるためにメタリングチャンバーのガスケットを増やして(ハガキで何枚も作って)対応しましたが暫くするとまたオーバーフローが起きました。ガスケットの厚さを増やしても、オーバーフローしないときでも運転するたびに燃料供給量が不安定で、同じ高速ニードル(高速油針)・低速ニードル(怠速針)の設定でも混合気が濃くなったり薄くなったりしました。
 メーカーとメールでやり取りすると、メタリングレバーを曲げてメタリングダイヤフラムとの間を広げるかメタリングダイヤフラムの劣化の可能性があるからを交換すればよいと回答されました。メタリングレバーを曲げることについては、中国製の金属製品だけに曲げる時に折れやしないかと心配でした。メタリングレバーを曲げずともメタリングダイヤフラムを交換してメタリングチャンバーのガスケットを2枚にしたらオーバーフローは収まり、混合気の濃さもニードルの調整に素直に従うようになりました。ま、メタリングチャンバーの容積が増えるのでなんらかの影響はあるかもしれませんが。
 オーバーフローしたら絶対に回らないのですからこれが最大の問題でした。今から考えるとおかしなことがありました。ポンプ式のエンジンなら三つ又ジョイントで燃料を給油してもエンジンが回っていなければメタリングニードルが閉じていてキャブレターの方には燃料が行かないはずですが最初に給油したときにキャブレターの方にも燃料がじゃんじゃん流れて「変だな」を思いました。買った当初からメタリング関係がおかしかったのかもしれません。
2023-07-28追記:結局、メタリングレバー(針閥揺臂)を曲げて解決しました。この時の作業は別のブログに書きました。したがそのブログ記事へのリンクです。



② 低速で運転可能でもある程度までスロットルバルブを開くと燃料供給が続かない
 メタリング系統の不調も相まって、初期設定で低速の混合気は運転が続かないほど濃い状態でしたからアイドリング付近で慣らし運転するためには低速ニードルを絞る必要がありました。
 メタリング系統が正常な状態でもアイドリングが安定する混合気にするとハーフスロットル以上にすると燃料が薄くなってしまいます。低速ニードルの調整はスロットル操作をしても回転が付いていく限り混合気を濃くする必要がありました。最終的に落ち着いたセッティングはアイドリングでのスロットルバルブの開きはグローエンジンとはかけ離れた3mmくらい、混合気はかなり濃い目で失火のサイクルが混じる状態ということになりました。混合気の状態を悪くして回転を下げていることになるので気持ちよくありません。

 低速ニードルはスロットル全開でもスプレーバーにはまり込んでおり、グローエンジンとは異なります。

  分解して分かりましたが低速ニードルだけでスロットルバルブのアイドリングから全開までの燃料の量を規制しています。このため、フルスロットルでも高速ニードルをいくら開いても混合気は一定以上には濃くなりません。
 スロットルバルブと低速ニードルの構造がグローエンジンに似ているとはいえ、グローエンジンの感覚で調整してはダメということでした。


③ 回転数センサーのコネクタの接触不良
 運転中に突如としてエンストする症状が出ました。プラグの火花が飛ばないので電気系統をチェックしたら回転センサ―のコネクタが問題でした。コネクタの差し加減で火花が飛んだり飛ばなかったりしました。これはOKのコネクタ自作用のキットのコネクタに交換して直りました。
 中国製のコネクタはどうもしっくりしません。純正のように「はまった、外れた」という手ごたえが感じられません。


④ キャブレターの脱落

 キャブレターはテフロンらしき樹脂製のインシュレーターが付いていてOSのヘリ用の55HZのように半月型の切り欠きのある2分割のリテーナーで取り付ける方式です。べーパーロックを防ぐためにインシュレーターを付けたのでしょうが相手がプラスチックですからリテーナーが噛み込むところはどんどんヘタって来ます。

 飛行中に3回キャブレターが脱落しました。燃料チューブとエンコンロッドで機体につながっているのでキャブレター本体の紛失は避けられましたが、2回目の脱落のときにリテーナーが無くなってしまいました。OS用のリテーナーは加工すれば使えないことはなかったのですが(実際にしばらく使った)純正も注文しました。

 最初に届いたのはご覧の通りの不良品でした。出荷の段階で製品チェックをしないのでしょうか。「Made in China」の評価が落ちないように気を付けてもらいたいものです。日本の取扱業者に連絡したら(取扱業者に写真を送った)交換してくれました。

 またキャブレターが外れては困るのでキャブをタイラップと耐熱エポキシ接着剤で固定しました。見苦しいのですが背に腹は代えられません。


⑤ プラグキャップの接触不良・脱落
 エンジンを使いだして1年半たった2021年の春ころから高速運転で失火のサイクルが入るようになりました。高速ニードルをいじりましたが直りません。2021年7月、飛行中にプラグキャップが外れてエンストしました。「プラグキャップがいかれたか?点火ユニットごと交換しなければならないのか?」と不安がよぎりましたが調べてみるとプラグキャップは大丈夫でプラグの方の角が丸まって抜けやすくなっていました。思えば頻繁にプラグを付けたり外したりしました。新品のプラグに交換すると抜けなくなったので安心です。その後エンジンはちゃんと回るようになりました。
 エンジンの不調は、高速運転で振動が大きくなってプラグキャップとプラグの接触が悪くなるためと推測しました(大き目のプロペラでフルスロットルで回しても失火は起きない、ある程度以下の回転数なら大丈夫ということ。「失火のサイクル」は本当の失火であって早期着火などの異音ではなかった模様)。NGH用のプラグキャップは押し付けてから回してロックするタイプなのでプラグの角が丸くなるとロックが効かなくなるようです。古いプラグは電極が無事なのでもう一台の、プラグの固定の仕組みが違うガソリンエンジン用にすることにしました。プラグは柔らかい金属なので取り外しが多いとすぐ丸くなります。プラグを付けたらめったなことでは外さない方が良いでしょう。

 2019年12月に初めて火を入れて、2021年9月現在で13ℓ回しました。2021年8月末にはこのエンジン用の2号機をやや力を入れて作りました。1号機はOSの46SFか55AXに積み替えて運用する予定です。

 この機体では見ばえも重視しました。重量増加を忍んでキャノピー兼胴体ハッチ(46g)とカウル(36g)もつけました。それでも重量は2150gに仕上がりました。低翼トレーナー機のような感じで飛びます。


 このエンジンは買うべきでしょうか。取扱業者のラジコン1の宣伝をするわけではありませんが、OSのGGT10がカタログから消えてしまった現在、このクラスの2サイクルガソリンエンジンで入手可能な選択肢は多くありません。グロー用のマフラーが付くこのエンジンにはアドバンテージがあります。同級のグローエンジンより出力が落ちることを承知の上ならそれなりに使えるエンジンではないかと思います。刈払機のエンジンしか使ったことがないガソリンエンジン初心者でも結果的には使えるようになったので、「絶対買うな」というエンジンではありません。
 出力はオリジナルの爆音マフラーやSlimlineマフラー仕様でOS32SXに標準マフラーを付けたくらい、OSの46SF用の873マフラーを付けると25クラスをやや回るという程度でしょうか。キャブレターの口径が7mm以上、排気・掃気のタイミングがグローエンジンと似ている(ほぼコピー?)にもかかわらずこれだけ力が出ないのは納得できないので873マフラーのバッフルを抜いてサブマフラーを付けるとかの工夫もしてみたいと思います(素通しマフラー+サブマフラーの組み合わせはほかのエンジンで試してうまくいったことがある。)。


 苦労しましたがいじったらいじったなりの結果が出たので愛着があります。バカな子ほどかわいいということでしょうか。2年近く楽しませてもらっています。これからも楽しませてもらいます。

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