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小型ガソリンエンジンRCGF 10cc 奮闘記⑨ 消音編-3 消音の仕組み

 サブマフラーの製作にあたり、マフラーの構造を改めて調べて文系の人間なりにいろいろ考えました。

 ブログで模型のガソリンエンジン用マフラーのカットモデルを公開している人がいました。バイクのマフラーより複雑な感じです。小さなスペースで消音効果を高めるために工夫がされているのが分かります。RCデポの店頭でカットモデルを見たことがありますが構造が理解しにくいほど複雑でした。・・・ちょっとマネできませんね。
URL: Big MOTEGI RC 連絡日記 キャニスター マフラーに、ついて (*^_^*)


排気の流れと音の流れは分けて考えることができる

 上の写真のマフラーも含め、普通のマフラーは排気をせき止める、逆流させる、急激に拡張・収縮させる、というように排気の流れを複雑にすることで消音しています。これでは当然排気抵抗は増します。


 一方でマフラーの出口から入口がのぞける製品があります。いわゆるストレートタイプですね。画像はDAC(Driving Assist Center)というカー用品店が扱っているTrustの「Power Extreme R」の販促資料です。この製品のうたい文句は排気を抵抗なくストレートに流して背圧(排圧)を小さくする、です。
 文系の人間の言うことですから鵜呑みにしてもらっては困りますが(またこのセリフ)、排気の流れをスムーズにしても音の流れを複雑にして互いに干渉・反射させ、減衰させることは可能と考えています。中にパンチングパイプを通したストレートタイプのマフラーの内部の排気と音の流れを考えてみます。
 パイプに穴が開いているので当然パイプの内・外に排気は出入りできますが、パンチングパイプの周りは閉じた空間なのでパンチングパイプの内側と外側の排気は噴出・逆流のような感じで出入りするのではなく、脈動的な圧力の変化に応じて局所的に出入りする感じになるでしょう。排気は主としてパンチングパイプの中を真っすぐ流れ、パイプの外側の排気はパイプの中の排気の圧力の変動を受け止めるダンパーの役割を演じていると思います。
 一方で音は波ですから四方八方に伝播します。パンチングパイプの穴から放射状に進む波は隣りの穴からの波やマフラーの内壁から反射した波と干渉したりして減衰します。また、パンチングパイプの穴に戻った反射波はパイプ内の波と干渉して減衰させます。こんな具合にパンチングパイプの中と外を行き来する間に波(音)が減衰して消音効果が得られるということになります。グラスウール入りの場合はパンチングパイプから出る音がグラスウールに吸収されるということになると思います。
 以上、社外マフラーの宣伝文句や自動車ジャーナリスト*のおおざっぱな説明より詳しく説明してみました。
* Wikipediaの「日本自動車ジャーナリスト協会」という記事では「・・・実際には自動車雑誌等を活動の場とする自動車評論家が主たる構成員であり、自動車関連技術や経済分野を専門とするジャーナリストの所属は少ない」と、技術の専門家でない者の集団だと言わんばかりの身もふたもない書きぶりになっています。しかし、これは言い過ぎであって「自動車ジャーナリスト」は素人向けに分かりやすい説明をしているだけで知識がないわけではないでしょう。
 

多孔拡張室タイプを採用(しか作れない)

 僕がサブマフラーを作るときに参考にした「自動車消音器について」と「排気消音機の消音効果」に基本的な消音器の構造が載っています。
 僕がよく作るタイプは「自動車消音器について」でいう「多孔拡張型」であり、「排気消音機の消音効果」でいう「F」です。バイクの社外品マフラーからグラスウールを抜いたようなものです。追記:多孔貫通管型という呼び方もありました。
 「排気消音機の消音効果」によれば、「A」のように入口と出口に管を付けた構造より「D」のように両方から管を差し込んだ方が消音効果が高くなるが排気抵抗が大きくなる、それを進めて管を貫通させて穴を開けると排気抵抗が小さくなる、ということだそうです。直感的に理解でますね。また、「自動車消音器について」のグラフを見ると、「多孔拡張室」は「単純膨張室」に比べて低周波領域で消音効果が落ちますがその他の周波数領域全体で消音効果が上回っています。
自動車消音器について URL: https://www.jstage.jst.go.jp/article/souonseigyo1977/5/6/5_6_305/_pdf/-char/ja。
排気消音機の消音効果 URL: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jriet1972/1/7/1_7_531/_pdf/-char/ja

 僕は排気抵抗を小さくして出力低下を少なくすると同時に刈払機(草刈機)的な低速でパラパラ、高速でビリビリという高周波(高音)の成分を消したいので「多孔拡張室」を選んでいます、というのは建前で、作りやすさと構造的な扱いやすさでこれしか選択の余地がありません。

 作り方はこんな具合です。穴をたくさんあけたアルミパイプにアルミのスプレー缶を被せるという構造です。右上の写真の上の方に写っているGM-8300というエポキシ接着剤(というかパテ)が別次元の高性能を発揮しますが(アルミにクラックが入っても樹脂の部分でクラックが止まるというレベル)、取り扱いが面倒なのでこの程度の工作にはホームセンターでも売っているJBウェルドを使っています。普通のエポキシ接着剤は全くダメです。


多段膨張室の原理を実現

 ホンダのサイトをニュースリリース、Fact bookとたどっていくと各車種の販促資料を見ることができます。各車種の「パワーユニット」のどこかのページにマフラーの構造が載っているときがあります。図はCRF450Lのマフラーのイメージ図です。このマフラーは3室構造で模型のガソリンエンジン用マフラーより単純なくらいですがこれで十分な消音効果を得ています。
 これをまねするとなると、マフラー内部で隔壁とパイプを接合しなければなりませんが高温のマフラー内部では耐熱エポキシ接着剤といえども熱で軟化してボロボロになります(経験済み)。しかし構造はまねできなくても原理はまねできます。純正マフラーを第1室、サブマフラーを第2室、追加の小型サブマフラーを第3室と見立てれば3室マフラーです。


グラスウールやステンレスウールは使わない

 バイク用の社外品のマフラーの多くはマフラー本体にパンチングパイプを通し、パンチングパイプと本体の間にグラスウール詰め込む構造になっています*。単純な構造であり、低コストで消音効果を確保できます。
* BMWやベンツは車用の純正マフラーでもグラスウールを使っています。なぜでしょう。
 別の記事でも書きましたが、Youtubeの投稿で、マフラーに水を入れて(グラスウールに水を浸み込ませて)消音効果を下げる方法が紹介されていました。グラスウールが水浸しになれば消音効果がなくなるということです。さらに、マフラーの実質的な容積も減りますから上で述べた「多孔拡張型」のマフラーとしても機能しなくなります。結果、低周波の音が減衰せずに「腹に響く重低音」になり、高周波の音が残って「サーキットの甲高い音」になります。
 僕は同じ寸法の「多孔拡張型」のサブマフラーを2つ作り、片方にステンレスウールを詰めたことがあります。比べてみると「あんまり変わらないな」という感じでしたし、しばらく使うとステンレスウールに廃油が浸みこんでずっしり重くなりました。エンジンを回していれば排気でかき回されてある程度以上廃油がたまれば排出されるのではないかと思いましたがそうはいかないようでした。廃油でびしょ濡れのステンレスウールは水浸しのグラスウールと同じで効果がないばかりか悪影響が生じることになります。ということでステンレスウールとかグラスウールを入れる仕様にはしないことにしました。グラスウールなどを入れなくても「多孔拡張型」マフラーで十分に消音効果があることは確認できています。

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