グローエンジンへのマフラーの取付け
マフラーの取付けについて気になることがあります。
1970年代以前ではOSのジェットストリームサイレンサーが半分に割れたマフラーからエンジンにねじ止めする仕組みでした。
オークションサイトから画像を拾ったのですがUコンをやっている人はENYAの29とかOSの35Sなんかをまだ使っているので需要があるのでしょう。
このマフラーではあらゆる継ぎ目からオイルが漏れたでしょうね。当時はシリコンシーラント的な製品はなかったと思いますから。
最初から話が脱線しています。
こちらもオークションサイトから拾った画像です。FUJIはクランクケース側からボルトを通してマフラーをねじ止めする仕組みでした。Super Tigreもそうでしたね。
でも、主流はマフラーをバンドやクランプで締め付ける方式でした。
こちらもオークションサイトから拾った画像です。ラジコンにこれを使うとは思えませんからUコンの人が使うんでしょう。脱線ですけどOSのエンジンにENYAのキャブレターが付いていますね。
その後シニューレエンジンが出てくる頃からマフラー側からねじ止めするタイプやエンジン側からネジを通して取り付けるタイプが主流になりました。
OSの46SFはマフラー側からボルトを通すタイプも付けられるようになっています。
バンドやクランプで横方向からマフラーを締め付けたらクランクケースがゆがみそうなのが気になりますが、マフラー側からボルトを通すにしろ、エンジン側から通すにしろ、ねじ止め式ならゆがむ余地はなさそうです。
前置きと脱線が長いのですがここから本題です。
ENYA 40XZの専用の取説には「マフラーをエンジンに取付けの際は均等なトルクで締め付け、締めすぎに注意してください。」と書いてあります。エンジン側もマフラー側も機械加工されているのに何が起きるというのでしょう。
マフラーの取付けネジを締め過ぎたらどうなるか簡単な実験をすれば分かります。
シリンダーヘッドを外して、マフラーを締め付けない状態でスリーブがクランクケースの中を上下する手ごたえを確認します。
マフラー取付けネジを締めて手ごたえの違いを確認します。この場合、シリンダースリーブが一番下まで納まる寸前でやや抵抗が増えました。
ヘッドを付けてクランクシャフトを回しても違和感に気が付くことはまずありませんがスリーブを動かしてみると抵抗が変わることに気が付く場合があります。
ENYAの取説のとおり、馬鹿力で締め付けない方がいいですね。
この写真は「Model Engine Tests」というサイトに載っていた写真です。
URL: http://sceptreflight.com/Model%20Engine%20Tests/Index.html
40年前にSuper Tigre 15X FIでこの現象に気が付いて愕然としました。注射器のピストンのように油の抵抗でスルスル上下していたスリーブがマフラー(KNKのボート用だったと思う)を取り付けるとギュっという感じで動きが渋くなりました。
イタリア製だからそうなったのかと思って、その時持っていたOS 25 FSRでやってみたら同じ結果になりました。それ以来エンジンを買うたびにこのチェックをしていますが、シリンダースリーブの動きが渋くなる組み合わせは結構ありました。こういうエンジンとマフラーの組み合わせではマフラーを取り付けるボルトの締め付けトルクが変わればピストン・シリンダーのあたりが狂うはずです。
マフラー取付けネジを締めればシリンダーを横からゆがめる力がかかるので本来ならヘッドの取付けネジ以上のトルク管理の正確さが要求されるのではないでしょうか。
マフラーをバンドで取り付けていた時代ではマフラーの取付けによるクランクケースの歪みはもっと激しかったはずですが問題にされていた記憶はありません。
OSがねじ止めのジェットストリームからベルトで締め上げるマフラーに変えたところを見ると気にしなくてもいいのかもしれません。
そうは言ってもパイロンをやっている人が「マフラーを付ける時はトルクを掛け過ぎちゃダメ」と言っているのでエンジンが回らなければ話にならない世界では気にしているんでしょう
僕は気になったのでいろいろやってみました。
固いもの同士を無理やり締め付けるということをしなければ大丈夫かと思って厚めのファイバー系のガスケットを挟んだことがありましたがそれでもクランクケースとスリーブの嵌め合いが狂いました。
マフラーを取り付けるたびに常に同じトルクでねじ止めできればクランクケースは常に同じだけ歪むので問題はないかもしれませんが実際には無理でしょう。現実的な解決策は、
〇 マフラーを取り付ける時のネジの締め付けトルクは必要最小限にする、
〇 マフラーを付けた状態でなじみを付けてその状態を維持するため、マフラーを一旦取り付けたらピストン・シリンダーを交換するくらいの大修理以外にマフラーを外さない、
〇 マフラーを付け直したりマフラーを交換したとかの直後はならし運転をやり直すくらいの気持ちで無理な運転をしない、
ということではないでしょうか。
取付けネジはマフラーを手でこじっても動かない程度の必要最小限のトルクで締めます。この程度のトルクでは緩む恐れがありますからボルトにはねじロック剤を付けます。二度とはずれない「永久固定型」の強力なねじロック剤を付けると外すときにネジが壊れる恐れがあるので使いません。
エンジンを機体から降ろせなくなると困るのでエンジンにマフラーが付いたまま機体に取付け・取り外せるように工夫をします。ラジアルマウントでエンジンの横からアクセスできるなら六角レンチを短くしたものを使えばマフラーを外さずにエンジンの取付け・取り外しができます。
ラジアルマウントを使わないときはマフラーが付いたままのエンジンにエンジンベッドを取り付けた状態でエンジンベッド側のネジで機体に取付け・取外しができるようにしています。
分解整備はクランクケースにマフラーが付いた状態でやります。ベアリングを交換するときもクランクケースにマフラーが付いたまま加熱しています。
保管するときもマフラーを付けたままです。
こういうことをやっているおかげで何かの競技会で優勝した、とか言えれば良いのですがそんなことはありません。