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ガソリンエンジンをグロー並みに消音できるか

 今回の記事はこれまでの記事のまとめのようなものです。ガソリンエンジンのマフラーと消音について僕が考えていることとやってきたことや調べたことをまとめます。

ガソリンエンジンはなぜうるさいのか

 ガソリンエンジンはうるさいのですが、ガソリンエンジンだからうるさいのではなく、同じ排気量、同じマフラーなら排気音は同じようになります(なるはずです)。
 実際に聞いてみればSAITOの4サイクルガソリンエンジンは静かなものです。ガソリンエンジンがうるさいとすればマフラーが残念なことが原因です。

 僕が持っている9ccのガソリンエンジンNGH GT9-Proはグローエンジンを踏襲した構造です。

 一方、純正マフラーはガソリンエンジンを踏襲したスタイルで、OSの40~46用のマフラー(873、上)に比べると大きさの違いが分かります。容量が小さい上に排気口の口径は10mm(実測値)です。
 純正マフラーでは1回も飛ばしたことはありませんが、NGH GT9-ProにOSの873マフラーを付けて飛ばすとグローと同じ音になります(力が出ていないからグローより静かなくらい)。
 グローエンジンのような形のエンジンを作ったのにマフラーがグローエンジン風ではないのは新しい型を起こすコストを掛けたくなかったからでしょうか。

 日本の取扱業者から部品として購入すると4624円という価格になりますが、アルミパイプ、アルミ板、機械加工の取付け部をロウ付け(溶接ではない)するという低コストの製品です。よく見ると前後の蓋がちゃんと丸く切り出されていません。業者としてはこういうところで利益を出さなければならないのでしょう。 

消音器の容量を大きくして排気口を絞れば音は小さくなる

 現在このエンジンにはSlimLineのQシリーズのマフラーを付けています。同クラス(55クラス)のグローエンジン用の標準マフラー(76ml、実測値)の2倍近い容量(128ml、実測値)です。アルミの押出材と機械加工した部材をロウ付けで組み立てた製品です。

 現在、9.5mm(3/8インチ?)の2本の尾管の口径を6mmに絞って運用しています。かなり静かになりましたが同級(55クラス)のグロー並みとは言えません。この辺の苦労は以前の記事に書いています。
 口径6mmが2本ということは面積が合計で約56.5平方mm、1本に換算すると8,5mm(4.25×4.25×π=約56.7平方mm)です。同級のグローエンジンのマフラーの尾管の口径はENYAで7mm、OSで6.5~6mm(いずれの実測値)ですから排気口は大きすぎます。
 排気口を6mm以下に絞らなかったのはNGH GT9-Proのもともとの出力がグローの32並みということで出力の低下を恐れてのことでした。

 別の記事で書いたようにもう一台のガソリンエンジンであるRCGF Stinger 10cc REの純正マフラーはマフラーとは言えない代物でした。容量は30ccくらい、口径12mmの尾管が2本という驚愕の仕様です。マフラーの内側には何の細工もありません。
 サブマフラーができていないころ、このマフラーで1回飛ばしたのですが、離陸してすぐに「これじゃ飛ばせない」と判断して降ろしました。

 実運用では純正マフラーに大型(大容量)のサブマフラーを付け、さらに排気口を5mm口径2本(1本に換算すると口径約7mmに相当)にすると同級のグロー並みの排気音にすることができました。

 写真を見ると排気口の小ささが分かりますが、出力(地上の回転数)は8mm口径のときとほぼ同じでした。グローエンジンでの経験でも排気口を絞れば消音効果が上がり、容量が大きければ排気口を絞っても出力の低下が少ないことが分かっていましたがRCGF Stinger 10cc REでそのことが再確認できました。5mmの口径は、純正マフラーの排気口の面積の約1/6です。

5mmでも行けるんじゃないの?

 10ccのRCGFでも5mmで大丈夫なら9ccのNGHでも行けるんじゃないの?ということで、NGH GT9-Proのマフラーの尾管の口径も5mmに絞ることにしました。内径6mmのパイプに外径6mm、内径5mmのパイプをはめました(固定はいつものJBウェルド)。SlinLineのQシリーズの容量の大きさ(実測値で128cc)に期待して出力低下が少ないことを祈ります。また、容量が大きければバッフルが入っていなくても消音効果もそれなりにあることが期待されます。
 NGH GT9-Proはキャブレターを調整(メタリングレバーの高さを調整)するまで回転が安定していなかったためマフラーの効果をきちんと把握できていなかったと思います。改めてレデューサーなし、6mmレデューサー付き、5mmレデューサー付きの回転数と消音効果を比較して別の記事で公開したいと思います。
追記:12月21日に実験した結果、5mmレデューサーで静かになりました。出力の低下があったとしても僕としては許容できるレベルでした。

貫通多孔管型消音器の効果

 僕がここ数年作っているサブマフラーは貫通多孔管型です。呼び名は定まっていないようで「多孔拡張」とか呼ばれている論文もありました。
出典:消音器から発生する流体音
URL: https://www.jstage.jst.go.jp/article/souonseigyo1977/14/5/14_5_245/_pdf/-char/en
 僕がこういう構造にしているのは、入口と出口にパイプを付けたタイプ(単純膨張室型、単純空洞型)より「排気抵抗が少なそうだな」と思ったのは確かですが、主として作るのが簡単で取り付ける時の荷重を貫通したパイプで受けもたせることができるから強度的に有利という技術的な理由からでした。性能を基準にして採用したわけではないものですが、実機でも採用例があることに安心しています。

 写真はトラック用品を製造販売しているジェット・イノウエで出している「TYマフラー」のカットモデルです。空洞の中間に隔壁を設けているのが異なりますが論文の模式図をそのまま実物にしたような簡単な(低コストな)構造です。穴の配置や大きさにノウハウがありそうです。
 作るのが簡単で構造的に頑丈でも効果が薄ければしょうがないのですが調べてみると、単純な空洞型(膨張室型)に比べて、
・排気の噴流が急激に拡大・縮小することがないので排気抵抗が小さく、乱流による気流音が小さい。
・開口比(多孔管の表面積に対する小穴の総面積の比率)を大きくすれば(穴をたくさん開ければ)、単純空洞型と同等の減衰効果がある。
という利点がある一方で、
・多孔管の最下流付近の小穴の列から多孔管に排気が突入するので「笛吹き音」が発生するという欠点があります。

 これは論文に載っていた模式図です。この論文を読む前は、多孔管の内側と外側の間で排気の出入りはそれほどないだろうと考えていたのですが実験ではそうではなかったということです。
 ただし、論文を読むと、笛吹き音に関する実験は送風機で送った一定の速度の気流を可視化したものなので、実機における脈動する排気噴流では違うことになるかもしれません。
 貫通多孔管型では、開口比が小さくなり(穴が少なくなり)、穴が大きくなると笛吹き音が大きくなるという実験結果が出たそうです。笛吹音を減らすにはその逆を行って、小さな穴をたくさん開ければよいということになります。

 この論文を読む前に直感で作ったサブマフラーの写真です。右側の下流側の穴を小さくし、たくさん開けています。この貫通多孔管の作り方はあながち間違っていたものではなかったようです(自慢タラタラ)。


 さらに大きな消音効果を得るために多孔管の周りを吸音材で覆うと効果的です。バイクのアフターマーケットのマフラーはたいていこの構造ですね*。とはいっても僕としてはステンレスウールが廃油でびしょ濡れになった経験があるので使うのに躊躇があります。
* バイク関係では業者関係でも、排気管から消音器の出口までの排気系全体をマフラーと呼び、消音を担当する部品だけをサイレンサーと呼ぶ向きがあります(四輪でもそうかな?)。「マフラーのサイレンサーを交換する」「マフラーの後ろに付いている太い筒状の部品をサイレンサーと言います」という具合です。OSが消音器のことを「サイレンサー」というのはこの辺からきているんでしょうか。


 貫通多孔管型とは違う話ですが、ガソリンのボートをやっている人がマフラーの中にステンレスのたわしを入れると静かになると言っていました。話を聞くと多孔管の周りに吸音材を巻くのとは違う原理での消音を狙っているようです(音だけを吸収するのではなく、排気そのものをたわしの目の間を通す感じ)。僕としては排気抵抗が大きくなりそうでちょっと躊躇しますが、消音効果は高そうです。ネットでもステンレスたわしを使う例が沢山アップされています。

尾管(テールパイプ)の小細工

 排気口の径やマフラーの容積以外にマフラーの性能を左右する工夫として、マフラー(サブマフラー)の尾管にいろいろな細工をするというものがあります。その効果はどうでしょうか。
 「内燃機関の排気消音機の基礎的研究(第2報, 尾管の長さ, 径および数の及ぼす影響)」という論文で紹介された実験結果をかいつまんで紹介すれば、
〇 尾管を全く付けない状態(マフラー本体に穴を開けただけの状態)での消音効果は乏しい。(まあ、そうなるだろうね)
〇 尾管を長くすれば消音効果が増す。(そうだろうけど管路抵抗も増えるよね。変な同調効果も出そうだし)
〇 尾管の径は小さいほど消音効果が高くなる。(当たり前だね)
〇 排気口面積の総和が消音器の消音効果に大きな影響を及ぼす。(これも当たり前だね)
〇 排気口面積の総和を変えることなく尾管の数を増やし、長さを変えると消音効果が上がる。(2本出し、3本出しにして長さを不ぞろいにしたら消音効果が上がるということだね)
〇 尾管の入口付近(マフラー内の排気が尾管に吹き込む部分)に小穴を開けて外とうで覆うと尾管の共鳴現象を抑制できる。(そうだったんだ)
ということになるそうです。URL: https://www.jstage.jst.go.jp/article/kikai1938/26/168/26_168_1174/_pdf/-char/ja
 別の論文では
〇 尾管の入口(排気が流れ込む部分)をベルマウス状にすれば乱流の発生が少なくなって気流音を抑制できる。(排気抵抗も減るだろうね)
〇 尾管の入口付近に小穴を開ければ尾管入り口の乱流を小さくでき、気流音を抑制できる。(小穴から噴き出す排気で乱流を吹き飛ばすということかな?境界層制御みたいだね)
とされています。
 こういう実験結果は直感的にそうだろうなと納得できます。
 このような細工をしても悪影響はないでしょうし、一つ一つの効果は少ないかもしれませんが、ちりも積もれば山となること(「ちりつも効果」という言葉がありますね)が期待できますからやってみる価値があります。

 ということで、尾管の口径が大きい場合はレデューサーを作ってマフラーの尾管に取り付けることにしました。左側は端面をベルマウス状(とまではいかないかな)に加工して小穴を開けてさらに出口付近を5mmに絞ったもの、真ん中は内径6mmのパイプに内径5mmのパイプを差し込んで端面をベルマウス状にしたもの、右側は内径6mmのパイプの端面をベルマウス状にしたものです。
 左側のタイプは排気口を細くするほかに、太い尾管に細い多孔管を差し込むので「小穴を開けて外とうで覆う」ことになり、共鳴現象を抑制でき、尾管の端面をベルマウス状に加工しかつ入口付近に小穴を開けることによって乱流を抑制することになります(そうなっていればいいんだけど)。これにより気流音の抑制による消音効果の増大と排気抵抗の減少による出力の低下の抑制が期待できます(回転計に表れるほどの効果は出ないだろうな)。
追記:12月21日に左側のレデューサーをNGH GT9-Proに付けたSlimLine Qシリーズのマフラーで実験しました。排気音が静かになり出力の低下もそれほどではなかったのですが小穴を開けたりベルマウスに加工したための効果であるかはわかりません。悪影響はなかったと思います。

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