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ENYA 41-4C 運用記 クランクケース換気システム 飛ばしたら問題発生→最終仕様

 ベンチテストで好結果が出たので実際に飛ばして高性能を実感しようとしました。

新たな問題の発生

 エンジンを倒立で搭載して飛ばしました。ロールで背面になるときにダウンの当て舵を打つと一瞬回転が落ちて白い排気煙が出ることに気が付きました。4ポイントロールやナイフエッジ飛行のときも正立以外では一瞬不調になります。さてはと思って背面飛行をしてみると背面に入れた瞬間に白い排気煙を吹き出し、背面飛行を続けていくうちに白い排気煙が出なくなります。白い煙が出るということはオイルを吸い込んでいるということです。
 オイルはロッカー室に溜まったんだろうと見当をつけました。運転中にロッカー室にどれくらいオイル(揮発成分がかなり飛んだ燃料)がたまるか確認してみました。
 後から行った再現実験の模様で説明します。

 この写真はロッカー室にオイルが溜まっていない状態です。吸気バルブスプリング(上)の左に2mmビスの頭が見えますが、インテークポートにつながる穴が開いていたのはこの位置です。


 こちらの写真は飛行後にヘッドカバーを外した状態です。普通(エンジンが倒立)に飛ばしている間にロッカー室の天井付近に溜まったオイルが機体が背面(エンジンが正立)になるとロッカー室の底に回っていることが分かります。インテークポートにつながる穴を塞いでいたビスが完全にオイルの中に沈んでいます。これが一挙にインテークポートに流れ込んで白い煙が出るわけです。ロッカーアームなどでオイルがかき回されればミスト状になるのでしょうがロッカー室の壁面を伝って液体のままロッカー室の底に溜まったのでしょう。
 ベンチテストで正立状態で運転している時はロッカー室からインテークマニホールドにつながる穴の開いている所が一番低くなるので燃料(オイル)が溜まることなくどんどん消費されて不都合に気が付かなかったと思います。


 YSのエンジンではロッカー室に溜まった混合気を吸気ポートに吸い込む(過給しているから押し込む)ための穴がバルブステムの周りに花びら上に開いています。YSは平気で回っているので大丈夫だと思ったのですが、僕のエンジンでは無理があったようです。エンストの危険がありますから(実際2回エンストした)対策が必要です。

最終的な解決策

 液体が一気に吸気口に流れ込まないようにすればよいと考え、シリンダーヘッドに開けた穴(実効径1.8mm)に2mmビスに0.38mm径の穴を開けたものをねじ込んだ仕様を試したところ効果がありました(背面にしたときに出る白い煙が減り、息をつかない)。しかし、これではOS56αと同じであり、クランクケースの換気能力が低くなります。


 抜本的な解決策として吸気管に直接バイパスチューブをつないで液体が溜まる空間をなくすことにしました。運転中のバイパスチューブを見れば液体だけが連続して流れることはないので液体が一挙に吸気管に流れ込むことはないはずです。吸気管のメッキをはがして、竹やり状に切った3mmの真ちゅうパイプをはんだ付けしました。一回目のはんだ付けでは吸気管に開けた穴にはんだが回って詰まってしまいました。2回目はステンレスの針金を通してはんだ付けし、はんだが固まってからステンレス線を引き抜きました。

 配管はこんな具合です。最近の4サイクルエンジンはどのメーカーもクランクシャフトハウジングにブリーザーニップルを付けているのでENYA 41-4Cでもそれにならってクランクシャフトハウジング(前蓋)に付けたニップルにチューブをつなげました。
 運転中はミストがチューブの中を激しく動きます。この仕様で4ℓくらい運転してから換気効果を高めるために真鍮パイプから吸気管に1mmのドリルを通しました。


 カウルに干渉しないようにクランクシャフトハウジング(前蓋)からのチューブをエンジンの下側に這わせます。もう少しチューブの長さを短くできなかったものかと思います。エンジンの左側にチューブが何本も這っている状態になったのでせっかくのプラグヒート用のコードが付けられなくなってしまいました。こちらは運用で対応せざるを得ません。


 面倒くさいのですが始動のときはこんなものをプラグにはめています。カウルの外に出ている電極(?)をミノムシクリップで挟み、始動したら引き抜きます。プロペラに触れそうなのでスリルがあります。

総 括

 クランクケース換気システムは効果があったと考えています。換気システムの導入前はエンジンをばらすと酸っぱい匂い(ギ酸などの匂い?)がすることが多かったのですが、導入後に修理のためにエンジンをばらした時はオイルが焦げた匂いだけになり、クランクシャフトやタイミングシャフトには新たな錆は出ていませんでした。


 ただ、クランクケース換気システム仕様にしても2サイクルエンジン並みになっただけで錆びなくなったとは言えないと思います。錆を防ぐには当日の最後の運転で、SAITOの取説にあるようにフルスロットルで十秒以上運転してエンジンを高温にしたあとに(燃え残りのメタノールやニトロメタン、水溶液を蒸発しやすくさせて)エンジンを止め、スターターで数秒回してクランクケース内のガスを排出し、防錆油を注すという作業が必要です。

 ところでブリーザーニップルから防錆油を注すのは難しいですよね?
 油が注しにくかったり、プロペラを動かしたら注した油が吹き出したりします。僕のエンジンではクランクシャフトハウジング(前蓋)に追加のブリーザーニップルを付けたので元からのクランクケース(シリンダーブロック)の後ろのニップルと合わせて2か所になっています。片方が空気抜きになるおかげで防錆油を抵抗なくエンジン内に注入することができます。


 この実験のために飛行場のすみでテストベッドの横でブーブー回していると、「そんなことはメーカーの方でもうやってんじゃないの」と言われました。たしかにOSはオイルリターンシステムを検討して採用し、その後ブリーザーニップルに戻ったわけです。この程度のことはメーカーではやっているでしょうしユーザーレベルでやっている人もあるかもしれません。
 そうはいってもこんな実験の様子は公表されていないので(僕は見たことがない)ブログに書くことにしました。


 この実験は時間と手間がかかりました。しかし記事にするために改めてメモを見返すとエンジン本体はそれほどいじっていませんでした。
 フロントベアリングを接触型のゴムシール仕様に換え、吸気管に真ちゅうパイプをはんだ付けし、シリンダーヘッドに穴を開けた(結局はふさいだ)だけです。アマチュアがやった手軽な実験ですが成果が出たので本人としては満足しています。

注意事項

 ENYAの4サイクルを持っている人はぜひ試してください、
と言いたいところですが気になることがあります。別の記事でも書きますが、クランクケース換気の仕組みを使い始めて4ℓくらい運転したときにタイミングギヤシャフトのベアリングが壊れました。フロントベアリングを接触型のゴムシール仕様に変えたことを含むクランクケース換気の仕組みとタイミングギヤシャフトのベアリング破損に因果関係があったら大変ですから長期的に様子を見たいと思います。

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