FRP製品をいろんなやり方で作る⑩ 第一部完結
ホイールパンツもカウルも形ができて後は塗装を含む表面処理だけになりました。が、カウルにもう少し手を加えます。
カウルの追加工作
カウルはマイクログラス1枚、#200のガラスクロス1枚で作りましたがそれではヘナヘナで、セミの抜け殻ほど弱くはありませんがエビの殻レベルすから取付け部や開口部の周囲を補強しています。
カウルの右下はシリンダーヘッドとマフラーの切り欠きがあるので見るからに弱々しそうです。
ここは#200のガラスクロスを2枚にしていましたがそれでも弱そうなのでさらにガラスクロスを貼り付けました。このあたりはカニの甲羅レベルの硬さになりました。
重さは?
カウルの塗装はまだですが形ができたので重さを量ってみました。軽くしたいがため主要部をマイクログラスとガラスクロス1枚ずつの手抜き工法にしたのですがどうでしょうか。
製法による差を見るため、スタイロフォーム製とバルサ製のカウルと比べました。
キットに入っているカウルはずっしりと重いのでFRPは重くなるかなと思いましたが、手抜き工法グラスと樹脂の使用量を最小限にしたことが功を奏して同じような寸法の他の製法のカウルと比べて同じようなものでした。耐久性があるので実用性の観点からは最適でしょう。でも、作るのに手間がかかるんですよね。
真ん中のスタイロフォーム製は軽くて作るのも簡単ですが耐久性はそれなりです(それでもボロボロになりつつも2年間は使った)。特にガソリンや鉱物油に弱いのは問題です。電動機なら耐油性を高めるための処理が不要なのでもっと軽くなるのでいいんじゃないでしょうか。
右のバルサ製は作るのが簡単ですがちょっと重めです。僕の主観ですがクリヤ仕上げだと見映えは最高なんですけどオイルが浸み込むのが嫌ですね。。
セメダイン1500でグラッシング
粘度が高いセメダイン1500で雌型と製品が作れることはわかりましたがグラッシングに使ったらどうなるかも試しました。
こてるNGHのタンク・点火ユニット室ハッチです。グラスを貼る前に薄めに樹脂を塗って平滑にしてあります。
マイクログラスを貼って見ると浸み込むことは浸み込むのですが時間がかかります。
この写真を見て樹脂が足りないんじゃないかとのご指摘もあろうかと思いますが、僕のやり方として、軽く仕上がるんじゃないかと考えて、
①バルサの生地に薄くエポキシを塗って余分な樹脂がバルサに浸み込まないようにシールする、
②バルサとグラスの間に余計な樹脂が入らないように最小限の樹脂でマイクログラスを貼る、
③さらにもう一回樹脂を塗って平滑にする、
という手順で処理しています。
こうした工法なのでマイクログラスを貼った段階ではマイクログラスはバルサには密着しているもののガラスの目は全く埋まっていません。
硬化後、グラスの層に達しないようにゴミを取り除く程度にザッとサンディングします。
この上にもう一度樹脂を塗ります。
2回目の樹脂を塗って硬化させた状態です。グラスの目はかなり埋まりましたが平滑にはなっていません。クリヤ仕上げにするのは軽く仕上げたいからなので、グラスがけば立ったところがあればそれを埋める程度しています。
この後軽くサンディングして最終的にウレタンクリヤを吹くのですが鏡面仕上げまでは追求しません。
セメダイン1500をグラッシングに試した結果ですが、できることはできますが作業性は粘度の低い専用の樹脂に比べるべくもありません。ハッチのような小さな部品だからできるのであって胴体とかの広い面積のグラッシングには使わない方がいいな、という印象です。
ハッチの作業の続きとして止ねじの部分にいつもの座繰り加工をしました。
バルサの生地にクリヤ仕上げするところですから座繰り加工の樹脂はバルサの色に近くなるようにバルサの粉とマイクロバルーンを混ぜて調色しました。大体いい色になったと思います。樹脂だけでは流れてしまうし樹脂が浸み込んだ部分の色が濃くなります。
カウルとハッチが付いた状態です。塗装を含む表面処理が残っていますが飛ばせる状態にはなりました。
セメダイン1500の使いみち
セメダイン1500はスタイロフォームの原型から雌型を起こすために使おうということで購入しました。
雌型を作った感触で、「製品も作れるんじゃないか」と考えてホイールパンツとカウルを作ったのですが積層用の樹脂と変わらない出来の製品ができました(塗装がまだだから完成とは言えないんですけど)。
型を作るにも、製品を作るにも、マイクログラスを貼るのにも十分使えるのですが本来は接着剤なので積層用の樹脂としての作業性はよくありません。
値段が安い以外のメリットとしては接着剤だけに弾力性があるので割れにくい(とはいっても割れる時は割れる)ということでしょうか。
使ってみたい方は試しても良いとは思いますがぜひ使ってみてくださいとは正直言えません。
「いろんなやり方で作る」という割にはセメダイン1500の使用結果だけという感じですが、しばらくFRP作業に一区切りついたので第一部は完結です。