年金生活フライヤーのブログ

ラジコン飛行機関連のブログ

自作ラジコン機の甲板張り②

 今年(2021年)8月30日初飛行の新作機の製作過程を写真に撮っていたのでそれに従って説明します。


 張る前の状態です。甲板張りの部分には胴枠はありますが縦通材は通っていません。最初の頃は一番上に甲板張りのガイドや胴枠の支えになるように縦通材的な部材を付けていましたがここ数年で工法を変えました。胴枠もバルサの細板の組み立て式です。こんな手間のかかる工法は組み立てキットやARF機では実現不可能でしょうね(自慢にはなりませんが)。
 プランクに使う細板は、2mmバルサを8mm幅に切ったもので胴枠の材料と同じです。ホームセンターにある80×600を愛用していますが、硬いのは絶対ダメです。さりとて模型屋さんにある高級SSグレードだと軽すぎて取り扱っている間に折れますし値段がお高めです。

 細板は真っすぐに整形するとともに細板同士の隙間が出ないように張る位置に応じて断面を台形に加工します。断面の傾斜をどれくらいにするかは現物合わせで貼り付ける直前に整形します。120番のペーパーをホームセンターの端材コーナーで見つけた直方体のブロックに貼り付けた特製サンディングブロックを使えば直線への整形と台形への加工は難しくありません。細板Aを張る、接着剤が乾く間に次の細板Bを整形するというサイクルで作業すれば能率的です。たくさんの細板をいっぺんに台形断面に加工していっぺんに張り付けることは現実的でないと思います。

 細板を張り進めている状態です。中央上から下側に、左右の縦通材から上側に張っていくと細板をあまりねじらずに貼ることができます。中央上の細板と左右の縦通材に接する細板を接着することで同枠がグラグラすることがなくなりますからこの段階で接着剤を乾かしてから次の細板を接着していきます。細板を接着する前に必ず仮り組みをして細板同士が密着するかを確認します。接着して待ち針やマスキングテープで固定しても跳ね上がったり隙間が開いたりすることがあるので張り付けた後も頻繁にチェックします。

 細板の端材は捨てず、端材になった細板同士を継ぎ合わて長めの細板を作ります。写真がないので味のある手書きの図をご覧下さい。


 

 作業中の写真が見つからないので完成状態の写真で説明します。細板を上と下から張っていくと細板同士を突き合わせる部分が出てきます。細板を現物合わせで三角形(くさび型)に切って断面を台形にし、きちんと隙間なくはまることを確認してから接着します。接着剤で滑りが良くなっていることを利用してくさび型の隙間にニュルっとはめ込みます。細板が内側にめり込んでしまっても胴体側面に窓が開いているので胴体の内側から指を入れて細板を押し出すことができます。写真では分かりにくいので手書きの図も付けておきます。


 お分かりいただけたでしょうか。


 甲板張りが終わった胴体は、キャノピーの形に合わせつつ、垂直安定板のフェアリングと一緒に整形します。削りかすが大量に出ますから野外作業になります。バルサの粉は飛行場の芝生の肥料になります。キャノピーはスタイロフォームですから削りかすはマイクロプラスチックになるので自宅で大きなポリ袋の中で整形しなければなりません。椅子の上にサンディングブロックとバルサくず落とし用のハケが、袋の上には大きなでっぱり(段差)を削いだりはみ出た接着剤をこそげ落とすためのカッターが見えます。
 最初に細板の継ぎ目の段差をピンポイントで削り落とし、その後曲面を作っていきます。きれいな曲面を出すにはサンディングブロックを前後に動かすだけではなく、断面にならって弧を描くように斜めに動かします。ある程度まで削れば直接手でも削って手の感触で仕上がり具合を確認しながら整形します。最初から240番くらいの細かいペーパーで整形しようとすると波打ってしまいますから120番くらいのペーパーでほぼ完成状態まで削って320番とか400番で表面をならしながら仕上げの整形をします。ほかの人が飛ばすのを見ながら合計1時間くらいで整形が終わりました。


甲板張りの利点
 甲板張りの工作の利点の第一は無駄な端材が少なくなるということでした。今回の機体ではキャノピーの後ろは80×600mmのバルサ1枚でまかなえました。1枚板でプランクしようとすれば2枚を消費し中途半端な端材が出ていたところです。甲板張り用の8mmの細板は先に述べた同枠の作成やキャノピーやカウルの骨組みを作るのにも使っています。
 僕は甲板張りに拘泥しているわけでなく、場所や仕上がり形状によってバルサ厚板の削り出し構造にしたり、スタイロフォームなど発泡材を利用したりしています。とはいえ、これらの工法に比べると甲板張りは軽量に仕上がることが多いようです。


甲板張りの注意点
 甲板張りであっても1枚板でプランクした胴体でも胴枠の間の表面がへこんでしまうことがあります。二次曲面は一次曲面より変形に強いのですが胴枠の間隔は100mm以内にしないと胴枠の部分が竹の節のように目立ってしまうことがあります。絹張りドープ仕上げで作っていた時は胴枠の間隔を50mmくらいにしなければなりませんでした。
 整形のとき、細板が食い違った所(段差)を削っていくと薄くなります。一番薄い所でも1.5mm以上は確保したいと思います。以前は3/32インチ(約2.4mm)というバルサが手に入ったのでマージンが確保されていましたが2mmバルサでは注意が必要です。段差を防ぐにはマスキングテープで細板同士を密着させるなどの工夫が有効です。整形のときは時々太陽(室内でできる人は蛍光灯)にかざして削りすぎがないことを確認します。細板を張るときはへこんだところができないように注意します。へこんだところの周りを削ったら穴が開きそうになる場合はバルサを貼った方が良いでしょう。
 段差や食い違いは削れば直せますが隙間ができると悲惨です。細くて薄いバルサ片を詰めたりするのは面倒くさいし、接着剤を流して埋めたり、バルサパテを使ったりするとクリヤ仕上げでは非常にかっこ悪くなります。細板の両側は滑らかに仕上げ、張る前に必ず仮り組みして隙間ができないことを確認するのが重要です(特にくさび型になる部分)。細板を曲げる関係で隙間ができそうなときは貼り付ける時に前に張った細板と次に張る細板をマスキングテープでつなぐなどの工夫が必要です。
 マスキングテープは巻き付けるように貼り付けて細板を同枠に密着させることもできるし、マスキングテープを貼った上から待ち針を刺すとバルサが痛まないという都合の良いこともあるのでマスキングテープを多用することをお勧めします。
 細板の組み合わせ方ですが、今回の機体は中央上から下へ、左右側板から上へと2方向(左右合わせて4方向)から張っていきましたが過去には左右側板から上へと1方向(2方向)から張っていき、中央で左右の細板を突き合わせていたことがありました。


 写真では分かりにくいのですが胴体上部の絹の継ぎ目あたりで左右の細板を互い違いにつなげています。前のブログで紹介した木製のカヌーに似た工法です。このやり方では胴体後部で細板を強くねじらなければならなくなるのでバルサの跳ね上がりを抑えるのに非常に苦労します。この機体を作るときは細板を水で濡らしてねじり癖をつけておかなければなりませんでした。中央上から下へ、左右側板から上へ張っていけば細板をねじる必要が少なく工作は格段に簡単になります。


接着剤
 僕は甲板張りで瞬間接着剤を使ったことはありません。各部材を密着させることができる工作精度を確保する自信がないし、接着剤を付けた後で接着する位置を修正することができないからです。この機体では水性のタイトボンドオリジナルを使いました。タイトボンドは初期接着能力がある(完全に乾かなくても粘りがあるのである程度固定できる)ので工作が楽です。ただし、乾燥するとバルサより濃い黄褐色になるので接着面が密着していないとバルサの継ぎ目が目立ちます。また、酢酸ビニル系の水性エマルジョン接着剤(木工用ボンドやセメダインホワイト)ほどではありませんがある程度弾性があります。耐水性が優れると言われるタイトボンドⅢも使ったことがありますが乾くとタイトボンドより濃い焦げ茶色になって接着面がくっきりとわかってしまいます。セルロース系のセメダインCは乾燥が早すぎる、初期接着能力が低いという点で作業性は劣るものの、乾くと透明になるので継ぎ目が目立たないことと整形が楽なことを考えると最良です。ただし匂いが強くて家人からのクレームが来るので使えません。マニュキュア除光液の匂いは良いのにセメダインCの匂いがダメなことには釈然としませんが家庭の平和のためには仕方ありません。

×

非ログインユーザーとして返信する